sims物語17「その顔をもう一度」

「知ってるから。サトシを知ってる」


ズキンという小さな痛みが走った。
それは心臓が驚いた痛み。
『サトシ』という言葉をこの国で聞く事ができるなんて・・・!




3 (30)
「本当に?」

3 (31)
「サトシ、うちの宿で寝泊りしてた。サトシ知ってる。さっき話してたでしょう?きっとあなたハンナね!」
「え、えぇ・・サトシを知ってるのね!?」

「知ってる!あなたに見せたいものがある!だからうち、来て!」

信じられない。
きっと彼女が言ってる『サトシ』は
私が知ってる『サトシ』に間違いない。

彼に・・・会えるかもしれない!!



3 (34)
「ちょっと待って。彼らに言ってくるから」
「うん」





4 (1)
「八木さん、私彼女の家に寄ってから宿に向かいます」
「何?」

「彼女の家で用があって・・」
「ダメだ」
「すぐです。5分だけ頂きたいんです」

4 (3)
「ここに来る前に言ったはずだ。俺の言うことだけ聞く。それが条件だと」
「えぇでも5分だけならいいでしょ?」

「一体何があるんだ、彼女の家に。何の縁もゆかりもないだろ、お前には」
「ありませんが・・・・」

4 (2)
「八木さん、5分とはいえ、夜の行動・・、ましてや単独なんて危険です」
「分かってる、こいつに分からせてやってる」
「・・・なら、今夜は彼女に家に泊まりましょう。彼女の家は宿屋です」

4 (5)
「宿屋だと?」
「申し訳ないんですが、武田さん。今夜の宿の変更をお願いします」
「はぁ・・」

「おい」
4 (4)
「何があるんだ、その宿に」
「・・・何も。ただ、そこがいいってだけです」
「・・・・」

「まぁまぁ。いいでしょう、八木さん。今夜は彼女の宿をお借りしましょう」
「ありがとうございます武田さん」
「チッ」


八木は心底気に食わない顔で、
女ってのは、どこ行っても我侭抜かしやがる・・・等とブツブツ言いながら
車に乗り込む。

「・・・・例の市宮って人かい?」
武田はヒソヒソと小声で聞いてくる。
「彼女の宿に泊まっていたそうで・・・もしかしたら・・」
「会えるといいですね、きっと巻き込まれていなかったんですよ」
武田はニコと微笑んだ。
その言葉に希望が差して、不安はだんだんと消えていくのが分かった。

「ありがとう」


巻き込まれていなかった。
きっと、そうだ。
怪我なんて全然なくって、
ただただ平然と、何事もなかったかのように
過ごしている。
きっと、そうだ。



4 (8)
市街から大分離れた場所まで来ると
小さな家がポツポツと建っている。

こんな場所に宿屋が本当にあるのだろうか・・・?
と不安を抱いていると、
とある民家の前で彼女は「ここです!」と言うので
窓から民家を見てみるが、ちょっとボロボロな民家が一軒。




4 (9)
「ママ、ただいま!」
「おかえりマーリーン。心配したよ、遅いから」
「ごめん。お客さんを連れて来たよ」
「客?」

4 (10)
(実はあの女の人、サトシが言ってた・・・―――)

4 (11)

4 (12)
「さぁさぁ、突っ立ってないで入って!遥々ご苦労だったねぇ」
マーリーンの母と思われる女性は3人を迎え入れた。

「さ、どうぞ」


4 (13)
「何もないボロ宿だけど、ゆっくりしてっておくれ」
そう言いながら、その宿のオーナーはかぶせていたクロスを叩くと、ホコリが舞う。
ワンワン!と数回吠えた犬は、そのまま外へ行ったり中に入ってきたりを繰り返す。
電気は2つほどのランプ。
ベッドは2段ベッドが並ぶ。


4 (14)
「あ、そうそう。トイレだけどねぇ、1回ごとに流さないでくれ。節水しないと、この国じゃやっていけないからね」

4 (15)
「・・・トイレを数回に1回しか流せないんですか!?」
「そうさ。飲み水も提供できるのはこペットボトル1本。これで凌いでくれよ」
と、小さなペットボトルを渡される。

「・・・・やはり、来るんじゃなかった」
と小さくボヤく八木の言葉が聞こえた・・・。






4 (16)



決して豪華ではないが、マーリーンの母の手料理はおいしかった。
とても素朴で、さっぱりした薄味だったけれど、満足できた。

4 (17)
カチッカチッ

4 (19)
「マーリーン」
「!」





4 (20)
「夜は寒いでしょ?」
「そうね、ちょっと肌寒い」

「昼はあんなにムシムシしてるのに」
「マーリーン・・・聞かせて欲しいの。サトシもここに泊まったの?」
「・・・そうだよ」


4 (21)
「ここはね、汚いし、サービスも悪い宿でしょ?」
「そんな事は・・・まぁちょっとトイレは不便だけど、料理はすごくおいしかったわよ?」
「ふふ。サトシも同じ事言ってた。料理がすごく美味しいって褒めてくれた」
「そう・・」

「ここって、バックパッカーとか、特別な事情の人がよく利用するの。サトシのその一人」
「なるほど・・」

4 (22)
「サトシはいい人ね」
「無口で無愛想な男でしょ」
「でも、心が綺麗な人よ。純粋で、温かい人」

4 (23)
マーリーンは、突然立ち上がるとポケットから小さな紙を出す。
それを、はい、とハンナに渡した。
「何・・これ?」
「見てみて」

ハンナは言われるがまま、その小さい紙を開けてみる


hanna.png
そこに描かれていたのは、文章ではなく、
自分だった。
「・・・私・・?」
「サトシが描いたの。上手でしょ」
「サトシが!?」

サトシ・・・絵が上手いなんて、知らなかった。
ずっと会ってなかったのに・・・ここまでしっかり描けるなんてスゴイじゃない!

「サトシ、言ってたんだ・・・」












4 (24)

4 (25)
「サトシ、なんで旅してるの?」
「・・・自分の知ってる狭い世界の中で、決まった人生を歩んでいくのに疑問を持ったんだ。俺は本当は何がしたいのか?何をすべきなのか?見つけたかったんだ。だから今まで居た狭い殻を割って広い世界に飛び出したかった」
「ふ~ん・・・?見つかりそう?」
「まだ・・・でも、たくさんの人と出会って、たくさんの文化に触れて、いい経験が出来てる」

4 (26)
「サトシは恋人、いるの?」
「・・・いないよ」
「そっかぁ・・」
「でも・・想いを寄せてる人はいる」



4 (27)
「その人の事を忘れたことはない」
「なんで離れてしまうの?その人のそばには居てあげないの?」
「そばに居ないほうがいい時もあるんだよ」

4 (28)
「その人にはその人の培ってきた道がある。生き方がまったく違う世界にいる人を無理に俺の世界へ連れてはいけない」
「愛してるんでしょ?」
「愛してるからこそ、離れるんだ。その人のいるべき世界でその人が頑張れるように」
「よく分からない」
「分からないよな、俺もたまに分からなくなる。でも、いつか俺が本当にやりたい事が見つかって、その道で頑張れるって自信が持てたら・・・」
「会いに行く?」



4 (29)
「・・・・どうかな。もう幸せに暮らしてるなら、邪魔はしないよ」













4 (31)
「サトシはハンナを愛してる。自分の道が見つかるまではって言ってた。決意固そうだった。でも・・・すごく悲しそうだった」
「・・・そう」

4 (30)
「ハンナ」
「ん?」
「サトシね、事件が起きる数日前に国出てるよ」

4 (32)
「! 本当?本当に!?」
「うん。しばらくはセトラにいたんだけど、事件の1週間前にココを利用した客と意気投合して、その人の母国に着いて行く事にしたんだ。」
「・・・そう。もう、この国にはいないのね・・」

ホッと安心する気持ちと
どこか会えなくて残念な気持ちとが、ぶつかり合って
複雑になった。

でも、サトシの気持ちはちゃんと伝わった。
あなたの本当の気持ちが分かった。


でも・・・じゃあなんであの時・・・

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ハッキリ理由を言ってくれなかったの?
どうして私の世界に突然遠慮をしたの?


何故・・・愛してるって・・
私に言ってくれなかったの・・・?




4 (33)
「ハンナ、もう本格的に気温が低くなってきた。そろそろ寝よう」
「そうね・・ありがとうマーリーン」
「えへへ。サトシがハンナの話をしてるとき、すごく照れてて可愛かったよ!」
「へぇ・・見たかったなぁ」


4 (35)2
そうやって、あんたは格好つけてるつもり?
全然格好よくないんだから。
私の世界は私が決める。
あんたが、どう思おうが、あの時、私は・・・
あなたの世界に飛び込むつもりだった。


4 (36)

4 (37)
「・・・本当にバカ・・」




















4 (46)

4 (45)
ブオオォォォォォ・・・





4 (47)
「武田さん、お疲れ様でした」
「八木さん、またよろしくお願いします。滝川さんも、お元気で」
「お世話になりました。武田さんも身体に気をつけて」



4 (51)






4 (53)
「・・・・・。」



「目的は達成できたのか?」
4 (52)
「・・え?」
「ここに来た目的だ。何かあるんだろう?男か?」
「・・・・い、いえ・・」
「嘘はつけないぞ。特に俺にはな」
「・・・」

4 (55)
「ちゃんと会えたのか?」
「・・・いえ、もう国を出たみたいで」
「そうか」

しばらく沈黙した後、再び八木が口を開いた。
「ちゃんと、会って伝えておけよ」
「え?」

「いつどこで事件に巻き込まれるか、または事故に合うか・・・分からんからな。気持ちの行き違いで自害しちまうかもしれん。人の気持ちなんてどう頑張ったって分かるワケがねぇんだ。そいつにちゃんと目を見て伝えておかねぇと何かあった後じゃ遅いんだよ」

4 (54)
「八木・・さん?」
「こういう仕事をしてると、仲間の死に目に合う事だって少なくねぇ。そいつが誰かに伝えたい想いを託される事もある。戦場に行くときなんかは特にそうだ。互いが互いに遺言を伝えておくんだ。でも、そういうのは・・・自分の口で伝えなきゃいけねぇんじゃねーかって思う」
「・・・」

4 (55)
「俺の親は小さい頃に事故で死んじまって、弟は・・・・首吊った。伝えたくても死んじまって伝えられねぇから気楽なもんだが・・だからこそ死んでからじゃ遅いんだって思うわけだ」
「八木さん・・・・」
「フン・・もう10年も前の話だから気にすんな」



4 (56)
「そいつが本当に大切なら、ちゃんと捕まえておいた方がいい。セトラのような事件なんてたくさん起きる。世界は広いんだ。・・・・まぁ、余計なお世話だな・・悪い」

4 (58)

私は待ってると決めた。
あなたが探す答えが見つかるまで
あなたが迎えに来るまで

・・・いつまで?
それまでにお互いが安全でいられる保証はあるの?
この気持ちを伝えられる?
あなたは・・・私より危険な場所にいるのに
もし、また何かあったら?
次はどうすればいいの?

あんな気持ちになるのは、もう嫌。

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不安で、すごく怖くて眠れない。
頭の中で傷だらけになったあなたの痛々しい姿を想像する度に
パニックになってしまう。

あんなのもう・・嫌。
あなたの気持ちを聞きたい。
あなたの口から・・・その言葉を聞いてみたいの。

私の気持ちを伝えたい。
私の口からちゃんと言いたいの。そして
その顔を、もう一度近くで・・・


ガタ・・
4 (57)
「ちょっと電話してきます」



4 (59)
prrrrrr・・・・

prrrrr・・・・ガチャッ


『もしもし』

4 (61)
「もしもし、滝川です」
『どーもどーも、どうなさいました?』

「・・・いえ、メールでお伝えした件なのですが・・・」
『あぁ、それですね・・』

4 (62)
「やっぱり捜索、続けて頂きたいのですが」
『・・・・』
「私、このまま気持ちを伝えられずに待ってるの、嫌なんです。帰って来るのを待とうと思ったんですが、やっぱりちゃんと会って気持ち、伝えなきゃダメなんだって・・・そう思って・・・」
『捜索、続けてますよ』

「・・え・・・?」


4 (60)
『きっと捜索は打ち切らないと思いました。私の勝手な判断でしたが、思い直してくれて良かった』
「五十嵐さん・・」
『気持ちはね、後回しにしちゃあいけないんです。きっちり聞いてもらいましょう、市宮さんにね』


「ありがとう・・五十嵐さん・・」
『じゃ随時、また報告させていただきます』

ピッ

4 (63)
サトシ・・・
あなたが嫌がっても
私は会いに行くから。

もう
逃がさないから。
だから
ちゃんと元気でいて・・・



4 (64)
「そろそろ時間だ」
「・・・はい」







4 (66)

私は決して遠くにはいない。
あなたをずっと追ってるから

いずれ追いつくから
追いついて
言いたい事全部吐き出してやるから

待ってなさい








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| sims物語本編 | コメント(2)

コメント

No title

こんばんは~(*´∀`*)

前回のアツコちゃん、良かったねー(。→∀←。)
自分の本当に大切なモノが見つかって、それを取り戻す事ができたようで
本当に良かった。間に合って良かった。
かつての仲間達が受け入れてくれるか少し心配したけど温かく迎えてくれて良かった^^
夢を叶えるには、自分の本当にやりたい事を妥協し過ぎちゃいけないよな!って思いました。
それじゃあ夢が叶っても楽しくないもんね。
きっとアツコちゃんならここからまた頑張って成功するって信じてます(*^-^*)
あとはカズ君との事も上手くいくといいね~♡

そしてサトハン!!!
サトシさんの手掛かりがっ!!!
まずはサトシさんが事件の前に出国していてマジ良かったー><安心したよぉ
そしてマーリーンへ語ったハンナさんへの想い。素敵だぁ~/////
そんな風に言ってもらえる女性(ハンナさん)は幸せだと思いましたよ(´ω`)
でも直接「愛してる」と言ってあげてぇ~!!!
大人だしね、色んなしがらみとか価値観とかあるからなかなか簡単にはいかないと思うけどね、
お互い想い合っているならちゃんと会って話して欲しいね。
会えない時間に焦れるけど、そんな2人を見てるのは嫌いじゃないです^^
会えない時間が愛育てるのさ~♪ ですね♡
「逃がさない」と決意するハンナさんも素敵!

因みにハンナさんの似顔絵、SSのイラスト風加工ですかね?それとも手描き?
手描きだったらめちゃ上手!!!
あ~、早くお二人の再会の抱擁が見たいぃ~(*´∀`*)
次回はどなたのお話かな?楽しみにしていますね♪

2014年|10月|02日|23:30 |from mirumom| URL

mirumomさんへ

こんにちわ!
コメントありがとうございます。
アツコの災難は終わりを迎えようとしてます・・・が、まだまだ残ってる課題もあり
こうして仲間とやり直せたのは、かなり前進。アツコ自身も成長できました。
夢は大好きな仲間と共に叶えてこそ意味があるってもんです^^

あとはカズとの仲直りと、コウジと企んだ作戦がうまくいくかどうか、です。


ハンナはセトラに着いて、サトシを知る人物が現れましたね!

> まずはサトシさんが事件の前に出国していてマジ良かったー><安心したよぉ
うんうん^^出国してて事件にはまったく巻き込まれてませんでしたよぉ~!
死んだりなんかしたら私もハンナも許しませんからねww

サトシはしっかり自分の目的を持ってるし、
ハンナへの密かな恋心もちゃんとあります。
本人には、それこそ言えてないけど、愛してるんですよね~~
本人にはなかなか言わないと思います。
やはりそれは、叔母からのキツイ言葉も効いてるんだと思うし
遠慮してるのかな?こういうの見てるとイライラする私ですがwww
おそらくハンナもイラついてると思います。
遠慮とかしてんじゃねー!!

> 会えない時間が愛育てるのさ~♪ ですね♡
はははwまさに!それですね(〃艸〃)
ハンナは強い女性ですから、もう迷いはないと思います。
とことん探すので、覚悟しておけサトシー!!><

> 因みにハンナさんの似顔絵、SSのイラスト風加工ですかね?それとも手描き?
手書きは無理ですうううwww
イラスト風加工した後に、ちょい足しでヘタクソっぽく書き足しただけですww

次回はツインブルックに戻って
残ったメンバーの話になるかなぁ?
ありがとうございました><

2014年|10月|05日|17:53 |from ahiruchanet| URL

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