sims物語21 「そして いつも忘れない」



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アル・メディーナ

広大な砂漠に囲まれた国。古くからオアシスとして親しまれ、商人達の重要な中継地として栄えてきた。

セトラと雰囲気の似ている国であるが
砂漠とオアシスに囲まれ賑わう観光地として有名な国である。


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観光地として栄える中心街を通し越して
人の少ない街外れまで歩いてきた。

カラッと乾いた空気と、風に乗ってサラサラとした白い砂が身体に当たり、
チクチクとする。

観光地である中心街もいいが、あえてそこではない
静かな方へ行くのが好きだ。

この道をずっと歩いていく。
気になるものが見つかるまで歩き続ける。
過ぎていく風景を楽しみながら
そこに住んでいる住人の暮らしを眺めながら歩くのが好きだ。





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乾いた空気が喉を乾かす。
そう思った時、目に飛び込む小さなバー。

ここはオアシスと呼ばれる地だ。
おいしい酒が飲めるはずだ。

カランカラン・・
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ドアを開けると、備え付けられている小さい鈴が鳴り響く。
しかしその音に反応する素振りもない数人の老人客。

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薄暗い店内で、既に何杯飲んだかも分からない老人が
じっと座っているだけの空間で
唯一、動きのあるカウンターのマスターらしき、老人が食器を片付けたりしていた。

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チラリとこちらを見て数秒経ったあと
「いらっしゃい」と聞こえるか聞こえないかくらいの大きさであいさつを交わしただけだった。

思っていた以上に・・
静かな店内。

音楽が流れているわけでもなく、ただただ時計の針の音だけだ。

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カウンターの隅に座り、ビールを注文すると、瓶が出てくる。

一口飲んで喉が潤う。
熱い気候の中で歩き続けてきたサトシの身体の中を
ちょうど良い炭酸の刺激が入って気持ちいい。

そう思ったらグビグビと一口、また一口と一気飲みしてしまった。

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「この店は随分静かだね」
マスターに話しかけてみると、意外と気さくな答えが返ってきた。
「洒落た音楽は流さん。あんなのは邪魔をするだけだ。ラジオはたまに流すけどな」
「へぇ・・」

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「ビールがうまいね、追加でくれないか?」
「水がおいしい土地だから美味いだろ」
「あぁ、ここ最近飲んだ中で一番美味いよ」


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「お前さんは旅人かね?」
「あぁ」
「どこから来たんだ?」
「セトラから」

少し驚いて「そうかい、大変だったねぇ」と返ってきた。
「・・・あぁ」
セトラで起きたテロ事件の事をセトラを脱出して、しばらくの間
ヒッチハイクで移動していたサトシはドライバーとの何気ない会話で知った。

自分が関わってきたあの家族の心配をしていたが
引き返すわけにもいかずにここまで来ていた。

バスとの衝突テロだったらしい。
自分達の車を所有していたからバスには乗っていないだろうとは思うが
安否が気になる。

が、テロ事件があった以上、
一般市民(ましてや旅人)が気さくに国境は越えられなくなっているので
連絡を取るのも困難である。

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「出身はどこなんじゃい」
「ツインブルックだ」

「あ~ぁ・・・恵まれたいい国だなぁ」
「そうだな、ここも俺は好きだが」
「ここにはあまり見かけない緑の豊富な国だよなぁ」
「そうだな」

「仕事はどうした?休業中か」
「仕事はしていない。自分がどうしたいのか見つけたい。今までしてこなかった人との関わりを今更してるんだ」
「ふむ・・人は人との関わりを絶って生き延びれるほど強くはないからなぁ」


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「・・・」
「私も若い頃は・・自分の事しか考えないで生きてきたがなぁ。自分の為だけで生きていけるもんじゃないなぁ」
「いつ気がついたんだ?その事に」


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「カミさんと出会った頃だな」
ハハハ!と照れ隠しな可愛い笑顔を見せる。
「なるほどな」

「カミさんと出会って、カミさんの為にガムシャラに働いて、子供が出来たら、そいつの為にもっと働いて・・・今はもうカミさんも先に逝ってしまってなぁ・・今は私と同じ老いぼれの為に店開いとるわ」
と笑いながら語ってくれた。

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「・・・」
俺も、思えば“あいつ”と出会ってから
かなり考え方も変わった気がする。

視野が広がった、というか
うじうじ悩んでいた事もあいつと出会ってから
不思議と勇気が沸いてきた。

親のレールの上でただ歩かされていた俺に
別の道を切り開くキッカケを作ってくれたのではないだろうか。



そんな事を思っていると、
マスターは「これからどうするんだ?」と聞いてきた。

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「んー・・どこか宿泊できるとこがあればいいが・・できれば格安なとこが嬉しいんだけど」
「街の方にたくさんあるだろう」
「あそこはたしかに多くあるが、高くてな」

「そうかい」
「しばらくはここに滞在したいんだけどな」


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すると奥の部屋から1人の男性が入ってくる。
50~60代くらいだから、おそらくマスターの息子って所か。

「あぁ、サイード。いいところに来たな」

サイードと呼ばれた男性は、こちらを見て挨拶を交わす。
「あぁ、いらっしゃい」
「どうも」

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「旅人が泊まれる場所を探しておるみたいだ」
「ふうむ」
「そうだ、お前さん、どこから来た?」

先ほど、話したはずだが・・
「セトラだ」
「それは大変だったなぁ・・疲れただろう?」
「はぁ・・」

ついさっき話した内容と同じような事を繰り返す。

「旅人っちゅーのは、思わぬ災難に巻き込まれやすいからなぁ・・ちなみにどこ出身だ?」
「・・ツインブルック。さっき言ったと思うが」
「あぁ、そうかそうか・・・緑豊かな国だよなぁ」
などと、1人でブツブツと言い始める。
老人特有の大きな独り言か。

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「・・・・。」

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「旅人さん、宿泊先を探してるんだったな」
「あぁ、格安でいいとこはないか?」
「もしウチで良ければひと部屋空いてるんだが、そこ使うか?」
「いいのか?」
「ま、ほぼ物置部屋として使っていたけど、寝泊りするには十分な広さだし・・食事をつけよう。ただし、店の手伝いしてもらうがね」


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「もちろん、やらせていただくよ・・にしてもいいのか?見ず知らずの旅人を泊まらせて」
「旅人は初めてじゃないんだ、それに見た感じ悪いやつにも見えないしな」
「知らないぞ?俺が殺人鬼がもしれない」

「はははっ!もしそだとしても後先短い老人殺してどうなるんだ」
「フッ・・ありがとう」

ガシャーン!
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突然大きな音が後ろから聞こえて
振り返ると、座っていた老人が一人、イスから転げ落ちていた。
「おーい、サウロさん、大丈夫かい?」
「うおおおーう・・うぇっぷ」
「飲みすぎなんじゃないか?今日は帰ったらどうだ?」
「平気じゃい!」

「・・・うちはね、あんな酒好きのしょうもない老いぼれしか来ない店なんだ」

「今は洒落た店しかないだろう?趣味が酒を飲むだけの老いぼれが行けるような店がもうココしかなくてなぁ」
「・・・」

「あの老人達は毎日来てるよ。カミさんもいないから暇で仕方ないだよ」

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「本当に、あんなに呑んだくれで最初は心配してたんだが、もう本人達は酒しかないからねぇ・・・まったく、ここがなくなったらどうするつもりだろうな」

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サイードの話を聞きながら俺はフと思い出した事があった。

俺が旅を始める直前・・・







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「やりたい事って、ないの?」
「やりたい事か・・・・・・・」

じーっと固まって考えるサトシに
「あんたお酒好きだし、バーでも経営したら?」
と簡単に案を出す。

「将来的にそれもいいかもな。誰も知らないような場所でひっそりのんびりやるのも」
「それじゃ赤字じゃない」

「いいんだよ、俺とカミさんと、たった数人のくたびれた酒好きのじいさんさえいれば」












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そんな話をしたこともあったけ。
この店は俺が思い描いてたものと同じだった。

酒が好きだからバー経営、か。
今更だが、なんて安易な理由なんだ。
適当に言うのにも程があるな。

でも
それも有りだとも思う。
酒が好きだからって事ではなく

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酒に溺れる老いぼれのために
居場所を作ってやって
カミさんと2人でただのんびりと経営するのも悪くないと思う。



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「あいつはどこの誰だ・・?まったくまたネズミが入ってきやがって・・・」
とマスターである老人はブツブツとサウロを見つめて独り言を言っている。

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「・・・」



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「で、こんな店の手伝いだけど、大丈夫かい?やめるなら今のうちだ」

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「いや・・・サイードは意外かもしれないが、割と気に入った。よろしく頼みます」
「そうかい。もの好きもいるもんだなぁ、暇で仕方ないよ?」

「今まで無駄に生き急いできた気がする。せかせかと時間に追われて生きてきたから、こういうのがいいんだ」
「ふ~ん・・・なるほどねぇ?母国では結構お偉いさんだったのかい?」
「いや・・そうじゃない。ただの親の七光りだ。ただ、それがすごく嫌だった。その呪縛から逃げるために自分のやりたい事を探しに旅を始めたんだ」



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「そうか・・俺にはわからん世界だが、大変なんだなぁ」
「分からない方がいいさ」

「ま、そういう事ならのんびりと過ごすといいさ。ようこそアル・メディーナへ」

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「あぁ、ありがとう」


この国で
しばらく生活してみようと思う。

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遠く離れているが、俺が求めてたものが見つかったような気がする。
ゆっくりと流れる時間の中で
じっくりと見つめていきたい。
自分自身と。

これからの生き方。



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そして
いつも忘れない。

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この空と繋がってるから遠くはないという事。

落ち着いたら
また手紙を出そうと思う。








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